未来のエレベーター技術を研究するティッセンクルップのテストタワー

August 19, 2019 Friederike Voigt

この地球上で毎日、マンハッタンの面積に匹敵するサイズの都市開発が新たに行われている。この爆発的な成長は、拡大する各都市にロジスティクスという重大な問題を投げかける。垂直移動という避けようのない課題の理解と解決のため、ドイツの多国籍企業ティッセンクルップ (thyssenkrupp) は、シュトゥットガルト近郊の町ロットワイルにテストタワーを建設。この高さ 246 m の構造物は、ドイツで公開されている中で最も高い展望台と 12 のエレベーター昇降路を備えており、エンジニアたちが未来の超高層ビル向け高速エレベーターの新技術を研究、検証している。

ティッセンクルップは垂直、水平の両方向に移動するエレベーターの検証を行っている。タワー マネージャーのベアーテ・ヘーンレ氏は「今後、都市はさらに拡大し、建造物はますます複雑になるでしょう」と話す。「それは、より多くの人々を運ぶ必要が出てくるということであり、我々の MULTI エレベーターは、まさにそうしたシチュエーションに備えたものです」。

ティッセンクルップ テストタワー
シュヴァルツヴァルト上空 244 m へと伸びるタワー [提供: thyssenkrupp Elevator]

全く新しいデザインを採用した MULTI には 3 つの昇降路があり、ケーブルレスで電磁石で駆動され、交換器で方向を変えることができる。この技術により同一の昇降路内で複数のエレベーターかごを同時に動かすことができ、乗客の最大待ち時間を、わずか 30 秒にまで縮めることが可能。タワーのサステナビリティの管理強化の一環として、エレベーターの制動エネルギーは回収され、ビル室内の暖房に使用される。

極端な環境を検証するための外膜

この巨大なドリル ビットのような外観のタワーは、緑の景色が広がるシュヴァルツヴァルトの上空に向けて、らせん状に伸びている。そのファサードの裏側には、デジタル工法により実現した、極めて高度なテクノロジーが存在する。

ティッセンクルップのテストタワーは、膜構造で外壁を形成した最大規模の建築物だ。建築家のヴェルナー・ソーベック氏とヘルムート・ヤーン氏は「シリンダー状のチューブにネグリジェをまとわせよう」と考え、全体を繊維ガラス製の生地で覆った。

この外壁は、遠くから見ると開口部のないコンクリート壁のように見えるが、実際には布地で、タワー上階に行くに従って透過性が増すようになっている。エンジニアリング/建築事務所 Werner Sobek のマキシミリアン・カルヒャー氏は、「異なるメッシュ幅を使用することで、上層の視野を広げたいと考えました」と述べる。

MULTI エレベーターは一般的なエレベーター同様、垂直方向に機能する [提供: thyssenkrupp Elevator]

MULTI エレベーターは水平にも動く [提供: thyssenkrupp Elevator]

この布地はコンクリート製のシェルを太陽放射などの熱応力や風化から保護し、また、らせん状の形が風の渦で引き起こされる振動を弱めることでタワーの倒壊を防ぐ。タワー内部ではダンパーで振動を弱めたり誘発したりできるようになっており、ハリケーンのシミュレーションなどの実験を実施可能。こうした機能により、このテストタワーはドバイを象徴する超高層ビル、ブルジュ・ハリファが砂漠の嵐を切り抜けるのと似た原理で揺れることができる。

どんなシナリオでも高い安全性

タワーの壁と屋根には約 2,700 t の鋼が使用され、この構造体を極端な環境にも耐え得るものとしている。ドイツ企業 Züblin が建設したシェルのプランニング コーディネーターを務めたニクラス・フランツィウス氏は「ビル内部は非常に複雑なので、デジタル モデルを使って事前に干渉をチェックする必要がありました」と話す。

ビル全体が Autodesk Revit 内に BIM モデルとしてデジタル化されているため、Navisworks による干渉チェックを実施できた。また、建設プロセスもデジタル化。プレキャストされた階段などの要素には QR コードが割り当てられているため、建設に関連する要素の材料をいつでも追跡でき、現場で問題が生じた場合にもすぐに把握可能だった。

このタワーはスリップフォーム工法と呼ばれる垂直工法を用いて建設されている。成形機を用いて、下から上へと 24 時間体制で連続的にコンクリート構造物を建設。「スリップフォーム工法を使用する際は、途中で作業を中断できません。コンクリートが固まってしまいますから」と、フランツィウス氏。

安全上の理由から、スリップフォーム工法のプロセスで使用されるスライド作業台の下での作業は許可されなかったため、タワー下部の入口エリアは最後に建設された。「タワーの安定性を確保するため、まず窓などの開口部をコンクリートで埋める必要がありました」と、フランツィウス氏。

ティッセンクルップ テストタワー 展望台
展望台からの景色 [提供: thyssenkrupp Elevator]

タワーの完成後、クレーンを使って上部から天井が差し込まれた。めまいがするほど多くの課題にもかかわらず、このタワーは BIM を活用したプロセスにより、約 2 年という記録的スピードでの建設が実現。2017 年秋にはオープニング セレモニーが催された。工期短縮と計画性の高いリソース活用の 2 点は、デジタル建設の明らかな利点だ。加えて、空へと伸びるこの構造体のデザインは、サステナブル建設に対する数々の建築アワードを受賞している。

このタワーは、周囲を取り囲む田園の見事なパノラマで、訪れる者に畏敬の念を起こさせる。だが、シュヴァルツヴァルトの一端に位置することの本当の利点は、近隣の大学でエンジニアリングを学ぶ 1 万名もの学生や研究センターの科学者たちに近接していることだ。こうした多数の人材が、未来の都市を形作り、そびえ立つ未来のメガシティの新たな基準を生み出すのに重要な役割を果たすことになるだろう。

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